ソレデモワタシハアナタヲアイス
「くしゅん」
隣で寝ていた美咲のくしゃみで、雨音に眠気を誘われていた俺の頭は、呼び戻された。
「寒い?服、着る?」
俺は、上体を起こして背中を向けて横になっている美咲を覗き込んだ。
「平気」
美咲は、俺に背を向けたまま眠気を感じさせない声を返した。
俺が帰宅してから1時間後、美咲は予想通りに連絡もなくインターフォンを鳴らした。
ちゃんとカサをさしていたらしく、今日の美咲はあまり濡れてはいなかった。
「こっちおいで」
俺は、また横になって、自分より少し体温の低い美咲の体に腕を回して引き寄せた。
「眠れないの?」
背中から抱きしめた美咲からは、いつも通り美咲の匂いがした。
「うん。なんか目、冴えたみたい。明日、休みだから良いんだけど。リュウも休みでしょ?」
体勢を変えない美咲は、声だけで俺を気遣った。
「うん。じゃ、どっか行こうか?たぶん明日は晴れるよ」
美咲は、そうだねと短く返事をして、触れていないと分からないくらいの呼吸を静かに繰り返した。
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