ソレデモワタシハアナタヲアイス
もしも逆だったら
「高橋!あのチョー美人、誰だよ!?」
レジャーシートの上に座って、惜し気もなく日光を浴びている美咲を指差して、佐藤が目の色を変えた。
「俺のカノジョ。美人でしょ?手出したら友達やめるからね」
俺は、開会式に出ただけで流れ始めた汗をタオルで拭いた。
「じゃ、その隣は?」
今度は、美咲の隣で日傘をさして座っている真由子に注目したらしく、日光よりも暑苦しい佐藤は、まだパワーを落としてはいなかった。
「真由子はただの友達だよ。良い性格してるから付き合うならそれなりの覚悟が必要だけどね」
俺は、目を輝かせている佐藤と別れて、美咲と真由子の元に戻った。
「この不景気に会社あげて仕事しないで球技大会って、リュウの会社って一体何なの?」
社員だけで行われた開会式を外部の参加者として見ていた美咲が、皮肉な顔をした。
「本当すごいよね。しかもこの炎天下で。でも夏休み中だから私も来れたんだけど」
真由子は、日焼けを気にしているのか、日傘の中で体を小さくしている。
「うちの会社けっこうイベント好きなんだよね。参加率も悪くないみたいだし」
晴天に恵まれた今日は、俺の働いている会社の定例行事、球技大会が開催されていた。
わざわざスポーツ施設を借り切って、部署対抗等で毎年盛り上がっている。
決まって世の中の夏休み中に開催されている事から、家族や親戚の小さい子供や、友人を連れて来る社員がけっこう多い。
俺は今年、たまたま休みの合った美咲と幼稚園が休みに入っている真由子を東京まで呼び出して連れて来ていた。
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