ソレデモワタシハアナタヲアイス
「なんで好きなん?」
俺も次々と上がる花火から目をそらさなかった。
「言葉がなくても伝わるから」
美咲にしては素直な返答だった。
俺は、視覚で感じる色付く空に頭が麻痺したようにボーッとなっていた。
「それと…」
花火に見とれ過ぎて、美咲が続けている事に俺は気付いていなかった。
「空人!」
「え!?うわっ、はい!」
急に名前を呼ばれた俺は、慌てて変な返事をしながら美咲に視線を落とした。
「存在の証拠を残せるから」
美咲はさっきまで空に向けていたデジカメを俺に向けてシャッターを1回きった。
「変な顔」
デジカメを目の前から離した美咲は、笑みを浮かべている。
突然の出来事に俺は何が起こったのかがすぐに理解出来ず、動けなくなっていた。
「撮ったの?今」
「撮ったよ。今」
どうにか言葉を発した俺に、美咲はいつも通り質問の答えだけを言い放った。
そして何事もなかったように、また空をデジカメ越しに見上げている。
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