ソレデモワタシハアナタヲアイス
空人が死んでから、美咲は一時だけちゃんとバスケに取り組んだ。
けれど、大学に行ってからは、やらなかったらしい。
クラス会の時に「もう走れない」と言った美咲の真相を、俺はまだ理解出来ずにいた。
今の美咲は、空人の存在を忘れてはいない。
けれど俺は、空人がどういう意味で、どういう存在で美咲の中に残されているのかが、分からないでいた。
俺は、それを確かめたくて、美咲にとって唯一、空人と共通していたバスケをかざした。
「さっきからただ澄まして座ってるだけですけど、運動なんて出来るんですか?バスケのルール知ってます?」
美咲の怖さにまったく気付いていない相沢さんが、美咲を挑発した。
「相沢さんこそルール大丈夫なのかよ?出るんだろ?」
この空気の悪さをあまり気にしていない佐藤が、更に入って来た。
「ルールくらい分かります。やった事ありますから」
相沢さんは、どこから来る自信のおかげなのか、得意気になった。
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