ソレデモワタシハアナタヲアイス
「リュウ、今日からの予定は?」
移動の車内で、美咲はテンションを上げるわけでもなく、流れる外の景色を見つめた。
「まずはホテル行って荷物置いてからだね。美咲はどこか行きたい所ある?」
この旅行にこぎつくだけで精一杯だった俺は、正直、下調べやスケジュール作成はまったくやっていなかった。
「う~ん…修学旅行で行った所、また行ってみたくない?今だったらあの時と違った感想かもだし」
美咲は何を考えているのか、ずっと景色を眺めたままだった。
「そうだね。じゃ、ピックアップして行き方とか調べないと。さすがに全部は無理だから。でもとりあえず今日はグラスじゃない?今回の目的だし」
今回の沖縄旅行は、壊れたと言っていた美咲の琉球ガラスのグラスの話しを聞いて、思い立ったものだった。
「そうだった。じゃ、今日は私のグラスね。あの時ってどこで買ったんだっけ?」
美咲がようやく窓から俺に視線を移した。
「確か国際通りのどっかのお土産屋さんだったんじゃないかな?ホテル近いから歩いて行けるよ。今日はその辺ブラブラしようか?」
俺の提案に美咲は、うん、とだけ答えた。
そしてまた景色に目を向けて、ホテルに到着するまで、その姿勢を崩さなかった。
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