ソレデモワタシハアナタヲアイス
アイノコクハク
「リュウ!」
美咲のマンションのエントランスに立っていた俺に、美咲が駆け寄って来た。
「どうしたの?今日は用事あるって言ったじゃん」
美咲は、さしていたカサをたたみながら、心配そうに俺を見た。
「うん、電話しても出ないからちょっと心配になって。ずっと出掛けてたの?」
時計を見ると日付けが変わる少し前を示していた。
夕方、自宅を飛び出した俺は、美咲のマンションに着いたものの、部屋の番号を知らない事に今更ながら気付いた。
いつもマンションの前まで送って来るだけで、美咲の部屋に一度も入った事がなかった俺は、美咲の部屋の番号すら知らなかった。
ポストを見ても、全てに名前が書いてあるわけではなく、インターフォンを押す事も出来なかった俺は、部屋に美咲が居るのかどうかも分からないまま、こうしてエントランスでただ立っていた。
「ごめん、移動多かったからバイブもサウンドも切ってたんだ」
美咲は、本当に今まで忘れていたらしく慌ててバッグから携帯を出した。
「良いよ、もう。無事に帰って来たんだし。それより部屋に行って良い?」
俺は、決して穏やかではない心の中を、無理矢理落ち着かせようとしていた。
「…良いよ」
美咲は何を考えたのか、少し間を空けて答えた。
俺達は、それから美咲の部屋に入るまで、一言も言葉を交わさなかった。
美咲のマンションのエントランスに立っていた俺に、美咲が駆け寄って来た。
「どうしたの?今日は用事あるって言ったじゃん」
美咲は、さしていたカサをたたみながら、心配そうに俺を見た。
「うん、電話しても出ないからちょっと心配になって。ずっと出掛けてたの?」
時計を見ると日付けが変わる少し前を示していた。
夕方、自宅を飛び出した俺は、美咲のマンションに着いたものの、部屋の番号を知らない事に今更ながら気付いた。
いつもマンションの前まで送って来るだけで、美咲の部屋に一度も入った事がなかった俺は、美咲の部屋の番号すら知らなかった。
ポストを見ても、全てに名前が書いてあるわけではなく、インターフォンを押す事も出来なかった俺は、部屋に美咲が居るのかどうかも分からないまま、こうしてエントランスでただ立っていた。
「ごめん、移動多かったからバイブもサウンドも切ってたんだ」
美咲は、本当に今まで忘れていたらしく慌ててバッグから携帯を出した。
「良いよ、もう。無事に帰って来たんだし。それより部屋に行って良い?」
俺は、決して穏やかではない心の中を、無理矢理落ち着かせようとしていた。
「…良いよ」
美咲は何を考えたのか、少し間を空けて答えた。
俺達は、それから美咲の部屋に入るまで、一言も言葉を交わさなかった。