ソレデモワタシハアナタヲアイス
過ち
気付いたら、俺の手は美咲の首を絞めていた。
美咲のキレイな顔が、更にキレイに歪む。
それを見て、俺の手にはもっと圧迫しろという命令が容赦なく伝わった。
掌では、美咲の脈が嫌でも感じられる。
自分が一体、何をしているのか、冷静に判断出来る頭なんて、今は持っていなかった。
ただ、俺の手は美咲の首を絞め続けて、美咲は顔を歪ませながらも、決して抵抗はしなかった。
どうして抵抗しないのか。
俺に殺される事を受け入れるのか。
何も分からなかった。
そして美咲の体は、ただの器になった。
人間なんて呆気ないものだ。
もう脈を打つ事も、顔を歪ませる事もない。
話す事も、泣く事もない。
「ソラが好き」と言う事もない。
―――全部、なくなったんだ…―――
美咲は、空人を忘れたわけではなかった。
吹っ切れたわけでもなかった。
乗り越えたわけでもなかった。
ずっと空人が好きだったんだ。
あの雨の日の美咲を見て、分かっていたつもりだったけれど、こうやって美咲の口からハッキリと言われたくはなかった。
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