ソレデモワタシハアナタヲアイス
「…サキじゃない?」
あまりにも予想外の発言に、ついつい俺は聞き返した。
「そう、『サキじゃない』って…私があの時、気にしてたのは、美咲が隆太を空人の代わりにしてるんじゃないかって思ったから。だから、夜、2人になった時に聞いてみたの。『隆太は空人じゃないんだよ』って。そうしたら『分かってる。今の自分もサキじゃないから』って」
真由子は、そこまで言って、またうつむいた。
「美咲、言ってたの。『サキはずっとソラを好きなまま、どうする事も出来ないからそのままで居る。でもソラが居ないのにサキとして生きて行く自信がない。だからサキとしてじゃなくて美咲として生きて行く事にした』って」
真由子が言っている事がイマイチ理解出来ない俺は、少しの沈黙を作った。
「二重人格って事?」
とりあえず俺は、思い付いた事を考えも無しに言ってみた。
「違うよ。確かに空人が死んでから、美咲、おかしかったけど、そういう病気的な事じゃない。意識的な事だと思う」
真由子は、何か確信を得ているのか、そう言って続けた。
「たぶん、美咲の中でサキはソラを好きでいなきゃいけないって思いがあって、そのままじゃ身動きが取れなかったんじゃないかな?だからソラを好きだったサキはとりあえずやめて、ソラの知らない美咲になろうとしたって考えたらどう?」
真由子が、謎解きのように美咲を解説していく。
俺は、その最後にたどり着くまで、ただ、黙って聞く事にした。
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