ソレデモワタシハアナタヲアイス
俺の目からは、また涙があふれた。
こんな自分を待っていてくれる人が居る、そう思うだけで心が救われた。
「戻るぞ」
ずっと黙っていた監視役が、俺を促した。
俺は、涙を拭って面会室から出た。
廊下を歩く俺に、窓から差し込む太陽の光が降りかかる。
俺は、ゆっくりと歩きながら、窓の外を見た。
見上げれば青い空があった。
青い空の前には白い雲。
白い雲の前には数本の棒。
数本の棒の前に今、俺は居る。
―――「もう走れないんだ」―――
『あの日』美咲はそう言って笑った。
笑った?
美咲は笑っていたのだろうか。
少なくとも『あの日』の美咲は、まだソラに捉えられていた。
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