ソレデモワタシハアナタヲアイス
空に咲く
「久しぶり」
相手が墓石だというのに、ついつい声に出してしまった。
「美咲とは会えた?」
私は、まるでそこに空人が居るかのように話していた。
「隆太の事、許してあげてね。いつも余裕かましてたけど、本当は辛かったんだよ。自分の目の前で親友にずっと好きだった美咲を持っていかれて、その親友には死なれて」
私は、花を挿したり、お線香に火を点けたり、一連のお墓参りの動作をしながら、口を動かした。
「空人、隆太が美咲の事、好きだったの知らなかったでしょ?」
相手が何も言わないのを良い事に、私は心の中にある事を出して行った。
「隆太も美咲と同じで変にプライド高いし、あの時は何も言えなかったんだよね。きっと2人の邪魔したらカッコ悪いとか思ってたんだよ。そう考えると空人の方がずっと大人だったよね」
誰も居ない墓地で、私はただ1人、話し続けた。
「でも空人が死んでから、まさか2人が付き合うとは思ってなかったなぁ。美咲が隆太を空人の代わりにしなかったのが、せめてもの救いだったけど」
一段落した私は、両手を合わせて数秒、目を閉じた。
「じゃ、次は美咲の所に行くね」
目を開けた私は、今度は偶然にも同じ墓地内にある美咲のお墓に移動した。
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