ソレデモワタシハアナタヲアイス
惹き付ける力
「誰かさんのせいで休み時間が消えてくんだけど?」
例によって例の如く注文された食べかけのカレーライスの前に、美咲が戻って来た。
「…俺のせいだって言いたいのかよ?」
同じく例によって例の如く注文され、食べ終わったカレー皿の前で空人はバツが悪そうな顔をした。
「今度は何だったの?」
席をはずしていた美咲を待っていたわけではないけれど、真由子はまだカレーライスを食べている。
「写真部。私は撮られる方じゃなくて撮る方なんだっての」
美咲は機嫌が悪そうに中断された昼食を再開した。
「毎日よく続くね。どこどこ来たっけ?」
すでに完食している空人に続いて、俺は口の中に残った辛味を水で流した。
「もう分かんない。モデルやれとか演技しろとか」
暑さが和らいだこの頃の学校は、次に控えた行事、文化祭に向けての準備が各クラス、各部で始まっていた。
本人にその意思がなくても人目を惹く美咲は文化祭のカッコウのエサにされている。
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