ソレデモワタシハアナタヲアイス
自分は撮る方だと散々モデルを断っていたくせに、こういう時にはしっかり記念を残している。
それでも俺は、そんな美咲が微笑ましいと思いながらシャッターをきっていた。
「美咲、これからどうするの?私まだ店番だからここ離れらんないんだけど…」
真由子が申し訳なさそうな顔をした。
「そっか。展示品見てなきゃなんないしね」
美咲は俺からデジカメを受け取って、撮ったばかりの写真をチェックした。
「私、体育館、行くつもりだったんだよね。なんか会長がバンドやるから見に来いって言われて」
今度は自分の手で作品を撮り始めた。
「何?美咲、まだアイツに付きまとわれてんの?」
俺は入学したばかりの頃の懐かしいネタを思い出した。
「そういうんじゃないよ。ただ観客、多い方が盛り上がるから見に来てって言われただけ」
美咲はきっぱりと否定した。
「あ、俺そろそろ行かなきゃ!」
隆太が何かを思い出したらしく慌てて携帯を取り出した。
「サッカー部って毎年1年生が出店やる決まりなんだって?」
真由子が窓から校庭に並んだ出店のテントを見下ろした。
「そうそう。しかも毎年ヤキソバ屋なんだって。じゃ、店番行って来るね」
携帯を制服のポケットに戻して、隆太は教室を出て行った。
「じゃ、私も体育館、行って来るよ」
真由子にヒラヒラと手を振って、美咲も教室から出て行こうとした。
「あ、俺も一緒に行く」
俺も真由子に後で、と告げて美咲と一緒に教室を出た。
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