ソレデモワタシハアナタヲアイス
ステージではタイミングよく会長が爆音を放っていた。
テンションがいかにも上がっている雰囲気でギターを弾いている。
そんなステージに何十人もの学生が群がって、まさにライヴは最高潮に盛り上がっていた。
―――意外に会長って人気者?―――
俺の中では入学早々、美咲の性格も知らずにソッコー告った変わり者の生徒会長というレッテルが貼られていただけに、なんだか予想を裏切る状態だった。
「見える?」
やっと手を放した美咲の耳元で俺は叫んだ。
美咲はこの爆音の中、言葉で返事をするのは無理だと思ったのか、コクコクと頷いた。
そしてそのまま真っ直ぐにステージを見つめた。
俺も美咲の隣でステージに目を向ける。
明らかに俺達とは熱の違う世界が、そこにあった。
マイクに向かって叫ぶヴォーカリスト、パフォーマンスで観客の目を惹こうとする演奏者、それに乗っかる観客達。
始めは圧倒されていたけれど、客観的に見ているとなんだか面白くなって来る。
それは美咲も同じだったらしい。
隣を見るとさっきまで耳を塞いで不機嫌そうな顔をしていた美咲が、初めて目にするものに興味を持った子供のような目でステージを見ていた。
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