ソレデモワタシハアナタヲアイス
俺は、そんな美咲になんだかムショウに腹が立った。
理由の分からないイライラを抱えて、俺はステージではなく美咲を見続けた。
俺の視線に気付かない美咲は、ステージで繰り広げられている事に逐一反応して笑っている。
俺は、美咲の頭の後ろから片腕を回して掌で美咲の視線を遮った。
急に何も見えなくなった美咲は、視線を取り戻す為に、突如、目の前に現れた俺の手を両手で掴んで隙間からこっちを見た。
唇が少し動く。
爆音の中で何を言ったのかは聞こえなかったけれど、きっと「何すんの?見えないでしょ?」と言ったんだと思う。
俺は、さっきと同じように美咲の耳元に近付いた。
「他のヤツ見んなよ」
俺の中で何かが切れた。
美咲は聞こえなかったのか、意味を理解する事が出来なかったのか、不思議そうな顔で俺を見返した。
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