甘い香り
その時。

病室のドアが開いて、
涼香が現れた。

「…涼香、おかえり。」

貴之叔父さんが声をかけた。

涼香は今にも泣きそうな顔で言った。

「…いまの、どういうこと?」

「聞いていたのか。」

「うん…涼ちゃん、もう長くないの?」

「…ああ。」

「そんな…そんなの信じない!」

「涼香…。」

「涼ちゃんいなくなっちゃ嫌だ!」

「…大丈夫だよ、涼香。
明日すぐに、じゃないし。
それに、宣告されても
それが絶対な訳じゃないし。」

「嫌よ、絶対嫌!」

涼香は走っていってしまった。

「はぁ…まったく、しょうがない奴だな。」

「俺が行くよ。
お前は寝てなさい。」

貴之叔父さんはそう言って涼香を
追いかけていった。

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