甘い香り
お兄ちゃんの病室は、
とっくに面会時間を過ぎ、消灯も過ぎていたけど
あたしはこっそり中に入った。

今の思いを伝えたかった。

そっと入ったつもりだったけど、
お兄ちゃんは起きていて、
「涼香…?」と声をかけられてしまった。

「あちゃー、見つかったか。」

あたしはカーテンをくぐって
ベッドサイドの椅子に座った。

「涼ちゃん…。」

「ん?」

「さっきは、ごめんね…。」

「あぁ、いいよ。気にしてない。
僕だって時間かかったし。
涼香が受け入れられないことは
当たり前だよ。」

「涼ちゃん…。」
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