甘い香り
目の前のベッドに横たわる涼ちゃんは
もうまぶたすらも動かず、
きれいな顔をしていた。

繋がっていた機械の管は
すべて外されている。

その合間を看護師がパタパタと
忙しそうにかけまわっている。

あたしは涼ちゃんがまだ
生きているんじゃないかという
可能性にすがって、腕をつかんだ。

だけど、その腕はもう
びっくりするほど冷たく、
抵抗もしてこなかった。

余談だけど、涼ちゃん
あんまり腕を掴まれるの好きじゃないんだ。

だから腕組みもダメだった。

何か珍しいよね。

あたしは静かに涙を流した。
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