短編小説の集い。
 

ここは富山の片田舎。

バスの左側からは日本海が一望できて、えりは特に気に入っている。


「なーつ。見て見て! 海が光ってるよ」

「うん。そうだね……」


僕はここ、氷見が地元。海辺育ちだから、海なんてあって当たり前という感覚を持っている。

でもえりは違う。長野育ちで、半年前に富山に越してきた。

だから海が珍しいらしく、毎日この調子。


「なーつ。海きれい」


無邪気にはしゃぐ姿は子供のように可愛くて、見れば見るほど吸い込まれそうな美しさだった。

もちろん、僕の一目惚れでえりと付き合った。
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