短編小説の集い。
公園は静けさに呑まれ、夜がふけてゆく。
それでも老婆は一人ベンチに座り続けました。
「帰ろうかぁ。さちこ」
老婆の声に促され、ブランコがキイ……と軋み、下に敷かれた砂地に小さい裸足の足跡がつく。
「たくさん遊べたかいね? さちこ」
誰もいない公園に、老婆の優しい声だけがしました。
「そうけぇ。たくさん遊べたら良かったね」
人知れず、誰かが泣いていた気がしました。
老婆はゆっくり腰をあげ、しわくちゃの手で誰かの手を繋ぐようにして歩き始めました。
「また来れたらいいね」
老婆は優しく微笑み、公園から姿を消しました。