不器用なカノジョ。
そして紅白戦開始直前。
応援団、チアリーディング部、吹奏楽部の全面協力のもと、本格的な応援付きの試合。
それくらい、この紅白戦は伝統のあるものなのだ。
「よし、全員集合!」
俺はそう声をかけ、1年全員を集める。
ちなみに1年は全員で12人。
それに対して相手は20人ちょっと。
しかも監督は2,3年チームのほうにつく。
どう考えても、俺たちは不利だ。
と、いうか俺たちが負けるように仕組まれた試合だ。
だからこそ、俺は勝ちたい。
かつてこの紅白戦で1年チームが勝利したことはなかった。
その歴史を俺が今日、ひっくり返してやる。
「今日は最後まで勝ちに行こうと思う。」
てっきり、え?!っていう顔をされるかと思っていた。
でもみんな、やる気にみなぎった顔をしていて。
正直、戸惑った。
だけど、嬉しかった。
俺だけじゃなかったんだ、勝ちたい、そう思っていたのは。
「もし、10点差になっても、それでも諦めないでいこう。
監督がいようが、相手が先輩だろうが、そんなの無視だ。
俺たちは俺たちで、俺たちの野球をしよう!」
『集合っ!!』
そこへ主審の声。
「絶対勝つぞー!!」
「「おーっっ!!!!」」
気合いを入れ直した俺たちは、
完全アウェイの負け試合へと走り出した。