不器用なカノジョ。






やっぱり…捕れてなかったか。

転がったボールを拾う。


本当は、そんな気がしてた。

ショートが投げたボールはグローブに入る直前、バウンドしたんだ。

いわゆる、ショートバウンドしたボールだった。


でもそれはキャッチャーなら捕らなきゃいけない。

素手でいいから、捕らなきゃいけないボールだった。


俺のミスだ。

俺の…ミス。



「すいません、タイムください」


だから…俺がこのミス、挽回してやる。



「交代、するか。

もう…限界だろ?」


内野手全員が投手の周りに集まる。


「ごめん、俺が打たれたせいで」

ガクッと肩を落とすピッチャー。



「しゃあねーよ。

相手は先輩だ。

ここまで抑えられただけお前はよく頑張ったよ」


右手で肩をポンポンと叩いた。


「よし、じゃあお前はもう交代な。

次は…千葉に投げてもらおう。」


主審に投手交代を告げる。

そしてマウンドに戻ると顔を真っ青にした千葉がいた。


千葉は1年にいる3人の投手の中で2番手。

1番手はさっき打たれたヤツ。



「千葉。

あんまプレッシャー感じなくていいぞ。


お前が投げるのはこの回だけだ。

この回投げればお役御免。


だからいつも通りのピッチング、な」


ニヤッと笑うと、千葉はだいぶ緊張が解けたのかぎこちない笑顔を俺に見せた。



「よっしゃ!

この回、3人できっちり締めるぞ!」


俺の言葉に全員が頷き、

試合が再開された。








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