不器用なカノジョ。
「…ナイスピッチング!」
ベンチに帰る途中で千葉とハイタッチする。
千葉は最初のバッターを塁に出してしまったがそのあとはいつも通りのピッチングで無事、8回表終了。
「純!絶対塁に出ろ!どんなセコイ手使ってもいいからな!」
「任せろ!
今日のヒーローインタビューは俺がもらった!」
「バカ!ねーよ!ヒーローインタビューなんて!」
「じゃあMVP!」
「それもねーよ!」
「なーんだ、つまんねーの。
ま、いっか。
俺の雄姿、その目に焼き付けとけ!」
ニッと笑った純は打席に立った。
その後ろ姿は堂々としていて。
アイツなら大丈夫だ。
そんなことを思う。
「なあ、俊輔」
「ん?」
プロテクターを外す俺の横に座ったのは健だ。
「次、誰が投げんの?
武井には荷が重過ぎんだろ?」
武井は3番手のピッチャーだ。
「ああ、そうだな。
…だから、俺が投げる」