不器用なカノジョ。





「なるほどな、俊輔が投げるのか。

…って、ええぇ!?」


隣で健が大声を上げる。

ベンチ中から俺たちに視線が集まった。



「お前…投げれんのか?」


「これでも中学時代はピッチャーもやってたんだ。

けど、基本はいつもキャッチャーだった。


本当に投手の数が足りないときに俺は投げてたんだ」


「けどな、相手は先輩だぞ?」


「分かってる。

実はな俺、秘密兵器だったんだぞ」


ニヤッと笑ってみせると呆れた顔を見せる健。



「まあ、いいよ、俊輔。

このチームのキャプテンはお前だ。


…お前に全部、託すよ」


そう健が言い終わった直後、グラウンドの上が騒がしくなった。



「純!走れっ!」


大声で叫ぶ。

どうやら純はセーフティーバンドを決めたらしい。


いくらアイツの足でも際どいか…


そう思いながら見ているとボールを掴んだサードがファーストへ送球。

でもそのボールは高く浮いてしまい、送球ミス。


その間に純は2塁に到達。



「よっしゃあー!!!」


俺たち1年チームはみんなで抱き合う。

これでやっと、俺たちにチャンスが巡ってきた。







< 107 / 235 >

この作品をシェア

pagetop