不器用なカノジョ。
「なるほどな、俊輔が投げるのか。
…って、ええぇ!?」
隣で健が大声を上げる。
ベンチ中から俺たちに視線が集まった。
「お前…投げれんのか?」
「これでも中学時代はピッチャーもやってたんだ。
けど、基本はいつもキャッチャーだった。
本当に投手の数が足りないときに俺は投げてたんだ」
「けどな、相手は先輩だぞ?」
「分かってる。
実はな俺、秘密兵器だったんだぞ」
ニヤッと笑ってみせると呆れた顔を見せる健。
「まあ、いいよ、俊輔。
このチームのキャプテンはお前だ。
…お前に全部、託すよ」
そう健が言い終わった直後、グラウンドの上が騒がしくなった。
「純!走れっ!」
大声で叫ぶ。
どうやら純はセーフティーバンドを決めたらしい。
いくらアイツの足でも際どいか…
そう思いながら見ているとボールを掴んだサードがファーストへ送球。
でもそのボールは高く浮いてしまい、送球ミス。
その間に純は2塁に到達。
「よっしゃあー!!!」
俺たち1年チームはみんなで抱き合う。
これでやっと、俺たちにチャンスが巡ってきた。