不器用なカノジョ。
「健、お前に任せるぞ。
ここを決められるのはお前しかいない」
1番の純はまだ2塁に留まっていた。
次の2番3番はあえなく三振。
そして4番…健の番が来た。
その前にピッチャー交代。
よし、行ける。
向こうの態勢も崩れてきた。
勝てるかもしれない。
そんな気までしてくる。
「すげえ、プレッシャーだな、その言葉」
「え?…あ、悪い」
ついマジになりすぎた。
「まあ、それくらいの期待がないとやりがいがない、ってもんだけどな」
ニッと笑う健。
コイツ…まったく緊張してねえ。
「ところでさ、お前、見つけた?」
「何を?」
「千尋」
ああ、と呟いて力なく首を振る。
「いや、まだ見てない。
アイツ…来てくれなかったな。」
そう言うと健は笑った。
「まだまだだな、俊輔。
俺はアイツの姿、発見したぞ」