不器用なカノジョ。
「オーライっ!」
そう言って声をかけたのはサードを守っている純だ。
そして純はキレイにグローブにボールを納めると1塁へ投げた。
「アウト」
よっしゃー!
1アウト。
あと、2人。
絶対無失点で終わらせてやる。
次の打者はパワーバッターの先輩。
当たれば怖いが、コースをつけば3振だってとれる。
その読み通りボール球を混ぜながら3つストライクを取った。
これで2アウト。
あと1人で9回表の先輩たちの攻撃が終わる。
次の打者はミートを絞るのがうまくて、バッティングコントロールが長けている。
先輩たちの中で1番注意しなくちゃならない人だ。
ボールを握る手が汗でびっしょりだった。
ロージン(滑り止め)をつけても、ボールが滑って行きそうで怖かった。
「俊輔、リラックスだ。
打たれても俺たちが守ってやる。
だから安心して投げろよ」
ボールを持った純がそう言って笑顔を見せる。
そして俺のグローブにボールを入れた。
「大丈夫だって。
お前なら、抑えられる。
ま、けど今日のMVPは俺だけどな」
「だからMVPなんてねーって!」
バカ純め。
でもその純のおかげでだいぶ、肩の力が抜けた。
そうだ。
俺は1人で野球をやってるワケじゃない。
たくさんの仲間がいる。
俺の後ろには。