不器用なカノジョ。
「……いってぇー!
何すんだ!てめぇら!!」
なぜか両サイドから後頭部を叩かれた。
「なんか…ムカついた」
「俺も」
ふざけんな!
んな理由で殴るな!しかも両サイドから!!
「いやあさ、俺らだって分かってるよ?
俊輔が抑えて、最後に特大ホームラン打ったから勝てた、っていうのは。
でもさ…なあ、健」
「そうそ。
なんかうまくいきすぎてて腹が立つ!」
んなもん知るか!
それは人を殴っていい理由にはなんねーぞ!
「お前さー…ホント、ムカつくなー」
改めて言い直す必要あったか!?健!!
「だいたいさ、あの先輩抑えた時点で、お前、MVP並みの活躍だったよ。
8回まで1失点で終われたのはお前のリードあってなワケだし。
それでさ、なんだよ。
9回裏のトップバッターで、しかも初球で、
…特大ホームラン、って。」
ムカつく、と最後に付け足す純。
また『ムカつく』とか言われたんですけど…
って、そんなことはどうでもよくて。
今、純が言ったのは本当のことだ。
正直、自分でも驚いた。
先輩を3振に抑えて、そのままの勢いで打席に立ったら、初球が絶好球。
ミートを絞って思い切り振ったら…ホームラン。
そうして伝統の紅白戦は幕を閉じたのだった…