不器用なカノジョ。
「全員そろったところで、今日の試合の話をする」
片づけを賑やかに終えた俺たちは部室へ行く。
監督は目をつぶって腕を組んでイスに座っていた。
「2,3年にはもう話をしたけど、
こんなこと、あっていい話じゃない」
監督がゆっくりと立ち上がる。
「お前らがどうして1年に負けるんだ?
おかしいだろ、どう考えたって。
それでお前らは甲子園で勝てるのか?
あ?どうなんだよ?」
甲子園。
その言葉にああ、そうだった、と思いだす。
うちの学校は今年、夏の甲子園に行くことが決まっていた。
「俺は情けないよ。
お前らがあんなに打てなくて、1年に負けるだなんて。
それで、1年生」
監督の視線が俺たちのほうに向く。
「お前らはよく、頑張ったと思う。
打撃はまだまだだが守備はみんな良かった。
とくに、俊輔。
お前のリード、良かったぞ。
それにあんなに投げられるなんて知らなかった」
監督が眉間に寄せていたシワをといて、笑顔を見せる。
「今日の試合で俺は決めたぞ。
1年から3人、甲子園のベンチにいれる。
2,3年の誰をベンチから外すかはまだ決めてない。
以上、明日からの練習に勤しむように。」