不器用なカノジョ。
それから俺たちは学祭を堪能した。
慎太郎と響ちゃんはすっかり仲良くなって。
まるでカップルみたいに見えて。
それくらい、距離が縮まっていた。
ひろは珍しくよく笑った。
やっぱり学祭という特有の雰囲気にいつもの鎧が少し、はがれていたのかもしれない。
「後夜祭もさ、一緒にいようよ!4人で!」
学祭も残りわずかになったとき。
響ちゃんのこの提案に誰も首を横に振ることはなかった。
もちろん、ひろも横に振らなかった。
うちの学校は前夜祭は存在しないが
後夜祭は存在する。
グラウンドの中心でキャンプファイヤーを焚き
特設ステージは軽音部によるバンド演奏
出店なんかもそのまま出店
生徒は自由行動で、いつもはうるさい教師たちもこのときばかりは静かになる
…らしい。
全部先輩から聞いた話だ。
入ったばかりの俺が知るはずもないだろ。
「じゃあ後夜祭始まったらあの場所で」
そう約束を交わしたと同時に蛍の光がスピーカーから流れだした。