不器用なカノジョ。
「あー…あのさ、ひろ?」
「なに?」
「1つ、疑問があるんだけど」
「うん」
「付き合う前も健のこと、すごく好きだったワケじゃないんだろ?
なのに、なんで付き合ったの?」
すごく、疑問だ。
好きじゃなかったら付き合わなければよかったのに。
「…っていうかその質問、結局健と付き合ったきっかけを教えろ、ってことになるじゃない」
ひろのその言葉に俺はあはは、と笑ってごまかす。
「まあ、いいわ、別に。
この際だから喋ってあげる。」
そう言ったひろはグラウンドに背中を向け、体重をベランダの柵に預ける。
「健はタイミングが悪かった…あ、いや、よかったの…かな?」
「え?どういうこと?」
「健がね、告白してくれた時。
ちょうど、いろいろイヤなことが重なってて。
それで精神状態があんまり良くなくて。
そのときに、言われたの。
千尋は1人じゃない。俺がいる。…って。」
…アイツ、中学生のくせしてカッコイイこと言いやがって。
腹が立つ。
「それが、告白?」
「そう。まあそのあとにちゃんと、付き合ってください、って言われたんだけどね」
「で、オッケーしたの?」
「…仕方ないじゃない。
あのとき、私に手を差し伸べてくれたのは健だけだったんだから」
ひろはそう言って軽く俺を睨んだ。