不器用なカノジョ。
「はい、じゃあまずは俺の自己紹介から」
教室に戻ってから始まったのはHR
男のイカつい強面の先生。
うげぇ…
俺の苦手なタイプだな、こりゃ。
うんざりしながら頬杖ついて自己紹介をなんとなく聞く。
「武藤 剛(ムトウ ツヨシ)だ。
1年間、よろしく」
黒板に名前を書いて武藤先生は言う。
おおお…
名前とルックスがマッチしてる。
こんなことってあるんだな、うん。
ニヤけそうになりながら俺は窓の外をぽーっと見つめる。
あーぁ 早く野球やりてぇな。
俺が真剣に野球やってる姿見たら
ひろ…ちょっとは優しくしてくれっかなぁ…
惚れろ、とは言わない。
ただ、男として、俺を見てほしい。
これって…贅沢な願いか?
…いや、絶対謙虚な願いだよな、うん。
「…おーい 聞いてるのかー?
野球部の古川俊輔ー?」
名前を呼ばれ、慌てて前を向いた。
「も、もちろんです!
先生の話をスルーできるやつなんていないと思います!!」