不器用なカノジョ。
「練習、どう?」
「厳しいよ。でも、楽しい」
「先輩にイジメられたりしてない?」
「大丈夫。仲良くやってる。
ってか俊輔が私の心配をするなんて100年早い」
「またそう言うこと言うんだからー」
苦笑いをしている俊輔の顔が思い浮かぶ。
「あのさー…ひろ」
「なに?」
「1つ教えてほしいことがあるんだけど」
最近、思うことがある。
俊輔は私に対して質問が多すぎる。
「内容によるんだけど」
「じゃあまあ聞くだけ聞いてよ」
「…うん」
信号が赤になって俊輔がブレーキをかける。
そしてチラッと私の姿を見た俊輔が言う。
「この間言ってたことなんだけど」
「この間?」
「健と付き合い始めるきっかけの話」
ああ、と呟く。
あんな話、覚えてたのね。
「俺、知りたい。
ひろの全部、までとは言わないけど。
でも俺、ひろのことならできるだけたくさん知りたいんだ。
だから、教えて。
健と付き合う前、ひろに何があって、
ひろがどうしてそんなに苦しんでたのか」