不器用なカノジョ。
「…そう決めたんだけど、でも全然うまくいかなくて。
だけどそれを表に出すワケにいかなかったから、学校で今までどおりに振舞ってた。
でも、健だけは気づいたの。
私が無理してることに気づいて、手を差し伸べてくれた。
健と付き合い始めたのがきっかけにすべての物事が良い方向に向かって行って。
お父さんは帰ってきて、明海は元気になった。」
声の震えが治まらなかった。
やっぱり、あの頃のことを思い出すのは辛すぎる。
「ひろ」
いつの間にか家の前で。
自転車は止まっていた。
「明海ちゃんには…伝えたの?」
「うん、ちゃんと伝えた。
最初はパニックになって、ふさぎこんじゃったけど。
お父さんが帰ってきたら吹っ切れたみたい」
深呼吸を繰り返すとだんだん落ち着いてきて。
声の震えが少しずつ、解消されていく。
「お父さんは、お母さんのこと、許したの?」
「うん。許してくれた。
私がお父さんの会社に毎日行って、説得して。
そしたら最後には
血の繋がりはなくてもやっぱり明海は俺の子だ。
ってそう言ってくれて。
それで、お母さんともちゃんと話し合って、仲直りした。
だから今は俊輔がよく知ってる昔のように仲のいい家族だよ」
明りの灯った家を見つめる。
もう、大丈夫。
あの出来事によってうちの家族の絆はよりいっそう、深まった。
もう2度と、あんなことは起らない。
私は自転車を降りる。
「ひろ」
そう呼ばれた次の瞬間
【ガッシャーン】
と派手な音をたてて自転車が倒れた。
そして私は俊輔の腕の中にいた