不器用なカノジョ。
「俊輔。千尋、良い子だよな」
「え?」
「俺、千尋と話すたびに思うんだ。
この子、すごく優しい子なんだな、って」
いったいキョンちゃんは何が言いたいんだろう。
「でもさ、千尋結構冷たいところあるじゃん。
一見、誰にでも優しくしてるけど、でもそうじゃない。
どこか相手と距離を置いてる」
キョンちゃんのその言葉に思わず、頷いた。
だってキョンちゃんの言ったことはもろ、的を得ていたから。
「俺も最初はかなり距離置かれてて。
でも、辛抱強く接するうちに、だんだん距離が縮まってきて。
距離が近くなってから俺、思ったことがあるんだ。」
キョンちゃんは頬杖をついてグラウンドを眺める。
「千尋ってなんでも簡単にこなしちゃうから、器用に見えるけど。
でも本当はすごい不器用なんじゃないか、って。
だから、人にどう心を開けばいいのかわからなくて。
その方法が分からないが故に、相手に付け込まれないために距離を置いてる。」
「…俺もそう思う」
勉強だって、少しやれば人よりよくできる。
運動だって、少し練習すれば人並みにできる。
人付き合いもひろはうまくこなす。
だからひろをよく知らない人は器用だと勘違いする。
でも、そうじゃない。
ひろはたぶん、誰よりも不器用なんだ。
そしてひろは、それをうまく隠す術を身につけている。