不器用なカノジョ。
バスが動き出してケータイを開く。
でもひろからの連絡はなくて。
勝ったなら勝った、って連絡くれてもいいだろ…
負けたにしろ、ダメだった、ってことくらい教えてくれてもいいのに…
そう思いながら親指を動かす。
『大会お疲れ。どうだった?』
それだけ打って送信ボタンを押す。
「なあ、俊輔」
「あ?」
「俺さあ、気づいたんだ。」
「何を?」
隣に座っている健は流れて行く景色を見つめながらポツリと呟く。
「千尋以外にいいオンナ、っているんだよ」
「はあ?」
何言ってんだ?コイツ。
「俺、ずっと千尋しか見えてなかったからさ、気づいてなかったんだ。
この間、千尋にフラれて、それで諦めようって思って。
んで、周り見てみたら…見つけた」
「何を?」
「千尋に匹敵するくらい、いいコを」
健がシレッとした顔でそんなことを言ってのけるから。
俺は、思わずふき出してしまった。