不器用なカノジョ。





「はっ…はっ…はっ…」


息が切れた。

でも、漕ぐ足を止めなかった。


足がパンパンになった。

でも、漕ぐ足を止められなかった。


一刻も早く俊輔に会いたくて。

俊輔のあの、いつもの笑顔を見たくて。


どうか、無事であってほしい。


それで息を切らした私を見て、どうか言って欲しい。


「ひろ」


って。


それだけでいい。

それだけでいいから。


だから…生きてて。



病院の時間外入口から入る。

そうするとすぐそこにあったソファにおばさんがいて。


もしかしてあの人…


「あ、あの」


思い切って声をかける。


「俊輔の…俊輔くんの伯母さんですか?」


「え?はい。

…あなたは?」


「高岡千尋です。俊輔くんとは小学校時代からの友達で。

それで…あ、あのっ…俊輔…俊輔は?!」


「今治療を終えて病室にいるの。

会ってあげてくれる?」


治療を終えて病室にいる、

その言葉が俊輔が生きている証拠で。

心の底から安心した。


「はい。…会いたいです」


たとえ、どんな姿でも。

俊輔…あなたの顔が見たい。



私は俊輔のもとへ走った。





「……俊輔っ!!!」











―Side 千尋 END―








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