不器用なカノジョ。
「…ねえ、俊輔」
「ん?」
「なんで最近、キョンちゃん、キョンちゃん、って言うの?」
足を止めたひろが言う。
「そ?俺、そんなにキョンちゃん、って言ってる?」
「とぼけてるつもり?」
真っ直ぐに俺を見つめるひろ。
やっぱり、ひろにこんな手、通用しないか。
「その前にさ、ひろ。
俺の質問に答えてよ。
そうじゃないと俺だけが答える、なんてフェアじゃないでしょ?」
「じゃあ先に俊輔が答えてよ。
そしたら私も答える」
分かったよ、と呟いて俺が溜め息をつく。
ひろには勝てないよ、やっぱり。
「なんで俺がそんなにキョンちゃん、って言うの?
って質問だっけ?」
「そう」
「簡単な話だよ。
俺の中じゃキョンちゃんはライバルだからだ」
「ライバル…?」
「さ、次はひろの番。
ひろの答えは?」
「ちょっと待ってよ!
何?ライバル、って」
ったく。
ひろは欲張りなんだから。
でもさ、いくらひろでも俺はそこまで甘くないよ?
「落ちつけよ、ひろ。
俺はひろの質問にちゃんと答えた。
だから次はひろの番。
な?そうだろ?」
少しの間、ひろは俯く。
そして、言った。
「そうね。
私の番。
だから答える。
キョンちゃんといるとき、疲れるかどうか。
だっけ?
…疲れるよ、すっごく。
俊輔といるときより何倍も疲れる」