紅い涙
目を大きく見開き、両手で身体を庇う。


グサッ…。


と、きたと思った。

しかし、そんな事実は微塵もなく、ナイフは刺さる寸前でピタリと止められていた。


…ど……して?


思わず腰が抜け、その場に座り込む。
ヒンヤリとした床が、太股に刺激を与える。

佳代はナイフをタオルで包むと、鞄へしまい、私に右手を差し出した。


「…どうぞ?」


馬鹿にしたように鼻で笑う佳代。
そんな佳代に無性に腹が立ち、その手を軽く叩いた。


「結構よ…!」

「そう…」


佳代が顔色一つ変えず、手を引っ込めた。
私は、そこら辺にある段ボールで身体を支え、立ち上がった。


「何!?イキナリ襲ってくるわ、偉そうな態度とるわ!……私分かってんだから!私の口封じをするつもりなんでしょう!?そんな事したって無駄よ!!どんな拷問にも屈しない!私が星歌の仇をとる!!!」


開いた口が塞がらないとは、こういう事を言うのだろう。
機関銃のように飛び出した言葉は、留まるところを知らずに、どんどん強くなってくる。
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