月姫物語
『天風の姫君』










風のようにさっそうと走り抜ける私を、市場の人たちはそう呼ぶ。










まさか、宮中で誉れ高い『月姫』と同一人物なんて、思いもしないだろうし・・・











それは、宮の人たちも同じ。









人間離れした、その運動神経。










リンリン










鈴の音を風が運んでくる。











そこで、月姫は足を止めた。












「あーあ。もう見つかっちゃった。」













普通の人間ならば、聞こえるはずのない鈴の音にため息を漏らす。
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