私を愛して
 「やめろやめろ!聞いちゃいられないぜ!ルジル・ランド!」


俺はガツガツとタバコを手に、客席から舞台へと近づいた。

ったく!

近くで聞けば聞くほど音が外れてるな…。
一体どうやったら、あんなに音が外れるのか、聞いてみたい。
俺はそう思いながら、舞台へ向かって客席を歩く。

 「なんだよ、パンプ!今のってきたと思ったのに、お前のせいでグダグダだぜ!」




 のるー・・・?


 「ハハハッ!」


タバコを地面へと落とし、また踏んで火を消す。

もったいないなんて気にしちゃいられない。
ディレクターが何か言ってきたけど、気にもとめなかった。




  「ルジル、お前は噂でのると音が外れると聞いた事があるぞ?」


ちょいちょいとルジルのあごを人差し指で触る。
 ルジルはいやな顔をして、少し引いた。俺は駆け引きのように顔を近づけ、静かに言う。

 「じゃあ、乗らない時はどうなんだ?」


イヤミったらしく言うとルジルは顔を真っ赤にして、反抗した目でこちらを見てマイクを投げつけてきた。


しかしながら、そんなものはヒョイッとかわす。

 「ちょっとパンプさんこまりますって!コード抜いて…いくら新曲が作れなくてイライラして…「あんなぁ?俺は曲が作れなくてイラついてんじゃねえ!俺は、3時からこいつの!」


俺はディレクターの目を見たままルジルの方を差す。



 「新曲レッスンがあったんだよ、あ?大体曲作ったのは俺だ!俺が拒否ればこのライブ、なくなっちまうぜ?」



ヘッドホンをつけていたディレクターは青ざめて俺に謝り、さっさかと放送室へと戻っていった。
 その後ろ姿を見送り、再びルジルへと目線を戻す。

 「ルジル、リハは3時までときいていたが?今は6時ちょいすぎだぜ?いい加減にしてくれないか」

 「そんなのあんたの秘書にいいな!」


ルジルは怒りをかんかんに表し、司会者はルジルが投げたマイクを拾う。

その後ろから靴を鳴らして歩いてくる一人の女。

やっと来たか
俺の秘書さん。





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