私を愛して
ニュースでみたさ。
ロシアフィー家がジャンに作曲を依頼したらしいじゃないか。
街中でも、繁華街でも、どこでもその話題でもちきり。
聞かないことなんか、ない。
「なんで俺じゃなくあいつなのかね?!」
ガーーーン!
その音とともにエバはソッと俺の肩に手を置く。
「パンプ!落ちついてよ…お願い。あなたの才能が悪いって訳じゃないのよ、ただあっちはバラードをよりよく書くって、評判なのよ」
俺は肩のエバの手を払いのけた。
「俺だってバラードは一番だって評判だよ!!!」
怒りをどんどんピアノへとぶつけていく。
めちゃくちゃながらも、こんなときにどんどん曲が出てくる自分がいやになる。
「パンプ…」
「妬んでなんかないさ。ただ、悔しいんだ」
俺を選んでもらえなかった事が…
俺はジャンみたいに生まれた頃から音楽の才能を持ってなかったよ。
たまたまデビューできたっていう程度さ。
俺の曲はムラがあって、売れるときと売れないときの差が激しい。
そんななか、選んでもらえたものがヒットした。
でも、それはただの流行歌に過ぎなかった。
発表したらヒットして
三ヵ月後には、俺の曲からジャンの曲に代わっている。
いつか流行歌じゃなく、世界に残る曲ができると夢見てた。そのためには、今回の件でジャンに勝たなければならなかった…のに
勝てなかった。
自信はあった。選ばれると思ってた。
無駄に期待してたんだ。
「なんであいつなんだ!!」
「…パンプ」
・・・どうしてなんだ。
「ジャンのチャンスを喜んでるさ、心から。きっとフィルスはジャンにいい環境を提供するだろうよ。音楽界ではあいつは一番だからな」
ただー…
♪ ♪ ♪
「俺みたいな自己中心的な奴には頼むのが大変だと思われたんだろうよ!」