名探偵はどこにもいない
兆し
青く澄み渡った空とコバルトブルーの海。
ここは人里離れた無人島。
童話にでも出てきそうな洋館が、一軒だけ建っている。
だが、人が住んでいるわけではなく別荘として貸し出されている。
その洋館から10分ほど海沿いに歩くと見晴らしのいい崖の上に出る。
そこに今回の宿泊者である6人の男女が集まっていた。

「なっ、やっぱりいい所だっただろ。撮影にはぴったりじゃん。」

一人の男がそう言いながら崖の下を覗いた。

「あなたのはいっつも結果論じゃない?この前の山小屋は古すぎてダメだったじゃない。」

女は遠くから投げかけるように言った。

「そうだね。壁に大きな穴も空いてたしね。」

「そうだっけ?うわ~高いな~。」

その声につられる様に集まる。

「本当だ。たっか~い!」

「何メートルくらいあるんだろう?」

「さぁ、20メートルくらいかな。まぁ、落ちたら即死は間違いないね。」

「馬鹿なこと言ってないで、撮影始めようよ。」

カメラを持った少年が、うながした。

「そうね。始めましょう。」

彼等は、高校の映画研究会の仲間で卒業制作の為にここに来ていた。
6人がそれぞれ準備を始める中、一人の男が弾かれる様に立ち上がった。

「ごめん。バッテリーを忘れて来たみたい。ちょっと取りに行ってくるよ。」

そういうと彼は洋館に向かって駆け出した。
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