桜の記憶
「桜、3分咲きですね」
「ええ。楽しみです。……ごほっ」
「秀二さん、大丈夫ですか?」
「……平気です。いつもの事ですから」
その言葉を聞いて、
私は彼をまじまじと見た。
いつも見ているようでいて、
常にはしっかりと見ていない。
気恥しさも先だって、
いつも足元か桜の木ばかりを見てしまっていたから。
半年前よりも痩せたような気がする。
あのときだって、ガリガリだなと思ったのに。
そう言えば顔色も良くない?
白くて透けてしまいそうなほどだ。
「琴子さんは、桜好きですか?」
「え? ええ。……好きです」
「そう。僕もです」
彼が、にこりと笑う。
その笑みは弱くて儚い。