桜の記憶
1
晴天に恵まれた日曜日、
桜並木のある公園。
空を見上げれば、
抜けるような青い空に薄紅色の花弁が映える
……はずなのだが、
私の視界はサングラスで覆われているので
全体に薄闇がかっている。
下に目を落とせば、
花見客の煩雑した光景が目に痛い。
「おおばーちゃーん」
先を走るひ孫が何度も振り返っては、
怪訝な表情を浮かべて戻ってくる。
「なんだよ大婆ちゃん、そのサングラス。
花見に来たいって言ったのは大婆ちゃんじゃねぇか」
「うるさいねぇ。
眩しすぎるからこのくらいで丁度良いんだよ。
全くお前は口うるさいねぇ」