桜の記憶
私も言わなかった。
自分の気持ちも、伝えなくていい。
あなたの嘘を信じたんだと、
そう、思わせてあげたいから。
いつか帰ってくるのだと、
私がそう信じているのだと、
そう思ってほしいから。
「……っつ、うえっ」
風が吹いて、
いつか私の心に積もった花弁も少しずつ少なくなっていくのだろうか。
だけど今だけは、
秀二さんに聞こえないほどか細い声なら、
泣いても良いでしょう?
雨が落ちた桜はあまりきれいじゃないけれど、
私の心の中の桜は、
涙でぬれても見惚れるほど綺麗で、
永遠に心に刻まれる。