雪女の息子
漆 阿弥樫町の妖怪
「あらまぁー……形勢逆転」
百鬼夜行と山姥らの戦いを、少し離れた木陰で、トラツグミが見ていた。
傍らには金髪の少女がいる。
「よろしいのですか?」
「問題ないよ。むしろ、面白いくらいにうまくいっている」
トラツグミは戦いに目を離さず、見つめていた。その傍らで、少女は瞼を閉じる。
「それで、わざわざ私を呼んだ理由をお聞かせください」
「分かりきったことを言うなよ。もうかれこれ十年以上の付き合いじゃないか」
トラツグミの言葉に、少女は目を丸め、そして一息吐いた。
「……十年は私にとっては瞬きに等しい時間でございます」
「ああ、そうだった……。人間の時間で言ってたよ」
「お気を付け下さい。貴方は、これから鵺へとなる方です」
少女の言葉にトラツグミはうなづく。そして初めて目線をはずし、自らの手を見つめる。
「これからって……まだ数年かかる。俺はまだ人間だから、時の感じ方が違うんだ」
「人間にとっても、数年は短き時間と思いますが?」
少女の窺うような言葉にトラツグミは目を合わせる。
その美しい姿に、少女は息をのんだ。
「待ち遠しい時ほど、時間の流れは遅く感じるのさ。人間はな。覚えておけよ」
「はい……」
そして再びトラツグミは戦いへと目を向けた
ちょうど、恭子が陽を店まで連れて行った頃だった。
百鬼夜行と山姥らの戦いを、少し離れた木陰で、トラツグミが見ていた。
傍らには金髪の少女がいる。
「よろしいのですか?」
「問題ないよ。むしろ、面白いくらいにうまくいっている」
トラツグミは戦いに目を離さず、見つめていた。その傍らで、少女は瞼を閉じる。
「それで、わざわざ私を呼んだ理由をお聞かせください」
「分かりきったことを言うなよ。もうかれこれ十年以上の付き合いじゃないか」
トラツグミの言葉に、少女は目を丸め、そして一息吐いた。
「……十年は私にとっては瞬きに等しい時間でございます」
「ああ、そうだった……。人間の時間で言ってたよ」
「お気を付け下さい。貴方は、これから鵺へとなる方です」
少女の言葉にトラツグミはうなづく。そして初めて目線をはずし、自らの手を見つめる。
「これからって……まだ数年かかる。俺はまだ人間だから、時の感じ方が違うんだ」
「人間にとっても、数年は短き時間と思いますが?」
少女の窺うような言葉にトラツグミは目を合わせる。
その美しい姿に、少女は息をのんだ。
「待ち遠しい時ほど、時間の流れは遅く感じるのさ。人間はな。覚えておけよ」
「はい……」
そして再びトラツグミは戦いへと目を向けた
ちょうど、恭子が陽を店まで連れて行った頃だった。