アナタだけのお姫様
「チッ、暇だな」
――と、バイクの唸る音が聴こえてきた。
侑也が戻ってきたんだ。
「ほら、かぶって」
渡された黒いヘルメットをきちんとかぶり、バイクにまたがる。
こうしてしがみつきながらも、流れる景色をバッチリと見る。
なんでこんな落ち着くんだろう。
「んー? あそこに居るの日向じゃん?」
……なんですと?
ひなが、確かにひなが……家の門の前で立っていた。
首にしっかりとマフラーを巻いていても、なんとも寒そうに。