私と○○
皆さんには、小さいとき、夢がありましたか?
私?
もちろん、私にもつたない夢がありました。



「若菜ちゃん、ここ書いてないよ?」



若菜ちゃんというのは私。
私に話しかけたのは幼稚園の先生。
名前は曖昧で覚えていないけど。
指さされた場所には「将来なりたいもの」とひらがなでかわいらしくかかれている。



「先生、恥ずかしくてかけません」



五歳にしてどうもあの頃から大人びいていた私が珍しくかわいらしいことを先生にいっていた。
そんな私に驚いてか、先生はひとときの間、にっこりと笑った。



「あら、若菜ちゃんは何になりたいのかしら?」
「ひ、…秘密です」
「うーん、でもこれ書いてもらわないと先生困っちゃうんだよね」



今思えば、「胡散臭い笑顔」だった。
何を書かされているのかというと卒園記念に作る、いわば生徒の思いで集だ。
物わかりのいい私は、先生を困らせたくなくて恥ずかしいのをこらえていった。

「お」
「お?」
「お、おお」
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