部屋替屋
肩より少し長いくらいの髪を後ろで一つに結んでいる。歩いてこちらへ向かって来たので正面しか見えないはずなのにそれがわかったのは、男が転んで顔から地面に着地したからだ。
この状態は助けに行かなければいけない。面倒くさいというぼやきを出さず、頑張って住吉は男のもとへ駆け寄ってみた。
「山田さん大丈夫ですか!」
住吉は助け起こそうと手を差し出したが、手で制され動きを止められる。男は照れながら自分で体を起こし、道着を叩いてまとわりついた土を落とす。そしてやっと、顔に付いている土を叩いたが顔の上で伸びてしまい、テレビで見た先住民の長の様に見えた。
まだ土が付いていると指摘しようとしたが、なかなか似合っていたのでそのまま話を進めることにした。
「初めまして、私は吉(きち)住吉と言います。」