部屋替屋
できるだけ大人に見えるように、背筋を伸ばして安定した低い声を出そうと努力する。
「恥ずかしいところを見られてしまったな。前まではこんなことは無かったんだが、最近体が思う様に動かなくてな。まあ、指導はできるから安心してくれ。」
「いえ、指導はいりませんので。」
尚も大人として会話をしようとしたが、どう進めても門に貼られていた生徒募集のポスターを見て申し込みに来たのだと断定されてしまった。
「申込用紙を渡すから、親御さんに必要事項を書いてもらって来てくれ。」
ついでに菓子でも出そうと言われ、家にあがらせてもらうことになった。
昨日じいちゃん達に浄水器の訪問販売員としてあがらせてもらえと、古臭いセールストークとかいうものを指導されたのが無駄になった。だからといって、その前に提案された小学校の町内新聞作りの取材という案を受け入れなかったことを後悔はしない。