師匠はコスプレ☆メイ探偵
アイビーの這いついた喫茶店に走ってゆくと、そのドアに手を突いて、呼吸を整えた。

 普段から心拍数が多い類は、ちょっと動いただけでも、さらに跳ね上がった心拍数のせいか、すぐに心臓が出そうに苦しくなる。

「ゼエゼエ」

 声に出して言うと、ドアを開けた。

 類が普通の昼休み時を外して休憩を取っていたせいで、あまり客はいなかった。

 昼ごはんを食べそびれていたサラリーマンが、書類を覗き込みながらご飯を口にかきこんでいる。その向こうの窓際には、すでに退職して、老後を楽しんでおられる老紳士が優雅にコーヒーをすすっていた。

 その風景の中に、溶け込むように、師匠の後姿があった。

 珍しい。

コスプレなしか。

 スーツ姿の背中をほっとした思いで見ながら近づいた。

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